2007年 ブロードウェー公演日記

2007年8月1日(水)~8日(水)
■DATE & TIME: Friday, August 3rd, 2007 @ 7:30 PM
Saturday, August 4th, 2007 @ 7:00 PM
Sunday, August 5th, 2007 @ 3:00 PM
■VENUE: Florence Gould Hall, French Institute Alliance Francaise
Location: 55 East 59th Street, New York, NY
(between Park & Madison Avenues)
■PROGRAM: “Otama-ushi” (The Valuable Cow)
“Sarayashiki” (Plate Mansion)
With an Introduction of Raku-go and Traditional Musical Instruments
(*Presented in Japanese with English Subtitles)
■PERFORMERS: Katsura Koharudanji
[Musicians] Japanese Flute: Katsura Fukuya
Taiko Drum: Shofukutei Kyojaku
Taiko Drum & Gong: Katsura Hiroba
Shamisen (Three Stringed Banjo): Masuko Hanato
■TICKET PRICE: $40
■PRESENTED BY: Nonprofit Organization International Rakugo Promotion Committee
■SUPPORTED BY: Agency for Cultural Affairs, Japan
AUTOBACS
STRAUSS DISCOUNT AUTO
上方の味 神宗
KIP
KONICA MINOLTA
Marubeni Co.
The Consulate General of Japan in New York
REENAL by Resona Bank
松竹芸能(株)
(社)上方落語協会
(社)企業メセナ協議会認定
8月1日(水)NY到着
公演メンバーはいつものマイケル・ジャヤックソン(字幕操作・翻訳)と三味線の花登益子、
鳴り物の桂福矢、桂ひろばに今回は笑福亭喬若が加わった。
13時の飛行機だけど夏休みでセキュリティーなどで混むかもしれないので10時半関空集合。
ノースウエストでデトロイトまで行き、NY行きに乗り換える。
デトロイトで2時間以上待ち時間があったが、入国審査が長蛇の列。
1時間以上かかって、税関も並んだ。
次のゲートに着いたときにはすでに搭乗が始まっていた。
少しデトロイト空港でショップをのぞいて暇つぶしと思っていたが全然余裕無かった。
約2時間のフライトでNYのラガーディア空港到着。
出口を出ると迎えのドライバーが来ていた。
大型のワゴン車に荷物を積み込みマンハッタンへ。
日本人のドライバーに落語の公演で来たと言うと驚いて、新聞に出てたあの方ですかと、
運転しながらこちらを振り返る。
今回7月初めに一度NYに来て新聞社を何社も周り、日本の旅行社のCMもタイアップで出演したりと
かなり宣伝に力を入れてた。
その甲斐あってか日本人社会にはこの公演はずいぶん知れ渡ってるよう。
今回の宿はカーネギーホール近くのパーク・セントラル・ホテル。
公演会場のフローレンス・グールドホールへも歩いて行ける便利のいいホテル。
ホテルには今回制作協力をお願いしているアクトベースの武部さんと現地スタッフの高橋さんが待っていた。
それぞれの部屋にとりあえず荷物を放り込み、近所のメキシコ料理屋で夕食を食べながら打ち合わせ。
その後武部さんらと別れてみんなでNYの夜景を見にロックフェラーセンターの
展望台「トップ・オブ・ザ・ロックス」へ行ってみる。
2月に1ヶ月文化庁から文化交流使としてNYに派遣されてた時にも来たが、夜は初めて。
夏休みで観光客が多いので、昇るのに時間がかかるかと思ったがすんなり上がれた。
真正面にエンパイア・ステートビルが見え、NYの夜景が堪能できる。
それからタイムズスクエアまで歩いていき、帰りは地下鉄でホテル近くまで帰って、
近所のデリでビールを買い、時差ボケ克服の仕上げをして床についた。

トップ・オブ・ザ・ロックからのマンハッタンの夜景。
中央はエンパイア・ステートビル

タイムズスクェアのスパイダーマン。
2月に行った時は寒くてこんなパフォーマーはいなかった。

夜11時を回ってもタイムズスクェアはたくさんの人で賑わっている。
さすが世界一の繁華街。
8月2日(木)ヤンキースとシカゴ
劇場は今日は公演が入っているとかで使えず、舞台設営などの段取りは明日の公演日の朝からとなった。
他のメンバーは1日自由時間とし、朝から僕とマイケルは僕の部屋にこもって字幕の修正。
昼過ぎにあらかた修正が終わったので、僕も少し街に出てみる。
高橋さんにミュージカル「シカゴ」のディスカウント・クーポンをプリントアウトしてもらい、劇場で$111の席を$65で購入。
その後ヤンキースタジアムへ。
今日はヤンキースの試合がホームで1時からあるが、もうすでに2時を回っている。
喬若も見れたら試合を見たいと言うのでとりあえず球場に行ってみる。
駅の前がすぐ球場で駅から出るなりダフ屋に声をかけられる。
強烈にアタックしてくるがチケットブースは全部閉まってる。
イニングを聞くと3回だと言う。試合が始まって2時間近く経つというのに本当だろうか。
しきりにすべてソールドアウトだ、安くしとくと付きまとう。
少し値引き交渉して結局ダフ屋から額面$73の席を$30で購入。
ところが席がバラバラだった。
僕がゲートを通って、喬若が通ろうとしたら、喬若のカバンが大きすぎるとセキュリティーに言われ、
どこかに預けないといけない。
おまけに彼が着ていたレッドソックスのTシャツもだめだという。
喬若は松坂大輔に似ているのでレッドソックスのTシャツを着てきてた。
今日はホワイトソックス戦なのに・・・・。
親切なダフ屋で俺が預ける所に連れて行ってやると、喬若をどこかに連れて行った。
中でしばらく待ってると着替えた喬若も来て、それぞれの席へ。
ダフ屋から額面より安く買った席だけど意外にいい席だった。
僕の席はバックネット裏で通路より後。球場全体が正面からよく見える。
3回までは乱打戦だったようで10-8でヤンキースが負けている。
3時を回っているのにまだ4回。
試合を見ていると隣のアメリカ人がしきりに話しかけてくる。
日本人だとわかると「ボストンに日本のピッチャーがいるな」「ダイスケ・マツザカか?」「そうそう」
「シアトルのイチローも知ってるぞ」と日本人選手の名をいくつも出してくる。
そしてこの席をいくらで買ったと聞くので、$30だと答えると、一瞬「え!?」と言う表情になり、
会話が途切れた。
あんたはいくらで買ったと聞くと$85だと言う。
彼らは額面$73だけどボックス席を$85で買えたので満足してたら、隣の日本人が$30で買っていた。
少しショックだったよう。
いい席だけど売れ残って1席ずつになった席で、すでに3回を過ぎてたので
ダフ屋もただの紙切れになる前にとかなりダンピングしたよう。
結局ヤンキースは負けたけど松井も見られたし、席も安くなったしで僕らは満足。
地下鉄で喬若と別れ、少し街を散策して「シカゴ」の劇場へ。
選んだ席はメザニン・フロント(2階の正面前方)。
ダンスはすばらしいけどやはり時差ボケで睡魔が波状攻撃で訪れる。
日本人にとってこのブロードウェー観劇というのは、過酷な睡魔との戦いがついて回る。
芝居の後またホテル近くのカーネギー・デリでビールを買って、寝酒を飲んで床についた。
明日から公演が始まる。

ヤンキースタジアムでのセルフショット。
バックネット裏で球場全体がよく見渡せる。

打席に立つ松井。この日は4打数1安打。
読売新聞が巨人カラーでフェンスに広告を出している。

「シカゴ」のアンバサダー劇場にやってきた観客達。
8時前でも外はまだ明るい。
8月3日(金)NY公演初日
8時過ぎに朝食をとって部屋に戻るエレベーターで乗り合わせた日本人が
「公演はいつからですか」と聞いてきた。
観光客がなぜ公演を知ってるのだろうとびっくりすると、「僕も大阪です。新聞見ました」という。
今日からですと答えると「今日帰るので」と残念そうだった。
朝9時40分にロビーに集合して、タクシーに鳴り物などの道具を積み込み3台に分乗して会場のフローレンス・グールド劇場へ。
10時から設営開始。
備え付けのスクリーンは場所が悪く使えないので、発注していたスクリーンを組み立て式のフレームに付け、
舞台中程のバトンに吊し、これまた発注していた高座を組み立て、毛せんを巻き、ビデオプロジェクターをセットする。
いつもの海外公演の作業を黙々とこなす。
7月初めに準備のため1度来て、設営段取りの打ち合わせもしてるし、スタッフも非常によく働くので作業はテキパキ進む。
鳴り物方達を隠す屏風状の衝立をセットし終わったところで12時。昼食タイムにする。
こちらのスタッフは12時になると作業途中でも休憩に入るらしいが、ちょうどキレのいいタイミングだったので、我々もランチにする。
グリーンルームという舞台横の控え室にみんな集まり中華弁当をいただく。
昼食後作業再開。
照明をセットし、音響チェック。高座と下座の音量を調節して舞台周りはOK。
ところが字幕がうまく表示されない。
劇場備え付けの日本製のいいプロジェクターだが、コンピューター画面がそのまま表示されず、
自然にズームされ字幕の端が切れる。
少し文字が欠けてしまっている。
スタッフがあれこれやって何とかスクリーンにPC画面がちゃんと表示されるようになった。
3時から一度通しでリハをやり、5時過ぎからプレス用の写真撮影。
朝日新聞の篠塚さんが日本からわざわざ取材に来てて3日間僕の公演を取材する。
そのほか地元フリーペーパーや日本テレビの現地クルーも来てる。
紋付き袴に着替え、高座に座り写真撮影。
その後楽屋で日テレのインタビューを受け、後は7時半の開演まで休憩時間となった。
7時過ぎから着替え、7時20分スタンバイOK。
少し押して開演。
ところが最初の鳴り物解説の字幕が妙に間延びして表示される。
おかしいなと思っていたら福矢のインカムにマイケルから字幕の文字の端が切れてるという連絡が入った。
昼間同じ症状があったが改善されてたはず。
どうやら機械を少し休めるため開演前に電源を落としたため、設定がリセットされたよう。
マイケルも表紙の字幕では気づかなかった。
プロデューサーの武部さんが舞台に出て事情を説明し、お客さんに少し待ってもらうことにした。
一時中断して復旧作業。
ところがその作業までスクリーンに映し出されているため、お客さんも作業結果に喜んだり落胆したり一喜一憂。いちいち反応する。
プロジェクターへの信号を切って作業するように伝え、その間鳴り物班に何か演奏して繋ぐように指示。
演奏してる間マイケルがすべての字幕文字を小さくして画面に何とか収めた。
出囃子の解説からリスタート。鳴り物解説が終わりいよいよ僕の出番。
トラブルがあったものの逆に一体感が出たようで、すごくノリのいいお客さん。
アメリカ人もゲラゲラ笑ってる。300人を超える客席で、アメリカ人率は2割と言ったところか。
2月に来たときのデモンストレーションでもそうだったが、「お玉牛」のお玉の唾をなめるところ
、牛のおしりに指を入れるところなど、「ウェッ!」とアメリカ人は確実に声に出してリアクションするのですぐわかる。
字幕のタイミングもいいようで笑いのズレもない。
中入り後の「皿屋敷」も、怪談部分の後のギャグもすぐノッてくる。
おかげで細かな仕草も入念にできた。
反応のいいお客さんにこちらもノセられて大満足の高座を終えられた。
トラブルで一時中断したので終演は10時前になってしまった。
撤収して劇場を出たのは10時半頃。
10時までに出ないと追加料金を請求されるが、トラブルの責任は向こうにあるので追加は取られないよう。
鳴り物や衣装を楽屋に置いてそのまま近所の日本居酒屋でスタッフも含め15人ほどで初日打ち上げ。
いいお客さんとスタッフのおかげで、いい初日を迎えられた。
あと2回もがんばらねば。

高座に毛せんを巻く鳴り物班の喬若・福矢・ひろば。(右から)
太鼓類だけでなく毛せん・座布団も持参。

楽屋で日本テレビのインタビュー。

ほぼ満席の客席。字幕を小さくしたので何とかスクリーンに収まった。
8月4日(土)公演2日目
今日の開演は7時からなのでホテルの出発は4時40分。
それまで各自自由行動にした。
朝からタクシーで船着き場に行き、サークルラインに乗って自由の女神を見に行くことにした。
マンハッタンの南端のバッテリーパークからでも自由の女神は小さくしか見えず、船に乗らないとよく見えない。
切符を買って並んでいると、福矢が偶然現れた。
二人で船に乗って75分のハドソン川遊覧。
マンハッタンやニュージャージーを眺めながら自由の女神の前を通り、バッテリーパークでUターン。
元の船着き場に戻る。
船着き場で福矢と別れバスでグランド・セントラル・ステーションへ。
週末だからかバスの運転手は、本当は右側にしか停まらないのに「次は左側に停車します。ウソ」とか
「シートベルトをお閉めください、離陸します」とか、バス停の度にジョークを言う。
グランドセントラルのオイスターバーでビールを飲みながらクラムチャウダーと牡蠣で昼食。
昼からMOMA(近代美術館)に行き、さっと作品を鑑賞してホテルに戻った。
今日も暑い。NYに来てから暑い日が続き気温は32~3度だけど湿気が多いようで蒸し暑く、
外を歩くとだらだら汗が流れる。
2月に来たときは-10℃の極寒の世界だったのに・・・
5時に劇場に入って準備。
鳴り物を組むぐらいなので準備もそれほど時間かからない。
楽屋に入ると僕の記事が掲載されたNYポストが届けられていた。
NYでは有名な新聞と言うことだったが、本来は芝居など記者が見て批評を書くので
3日ぐらいの公演では記事になることがない。
7月頭に来た時に、そこを何とかと頼み込み、着物で出掛けて行って
談話室のようなところで記者の前で落語のさわりを演じて見せた。
高橋さんにパソコンの字幕を操作してもらい、小咄や扇子・手拭いの使い方など実演して、
落語とはどんな物か説明した。
その甲斐あって写真入りでかなり大きく扱ってもらえた。
今日明日のアメリカ人の集客に少しは役立つだろう。
ところがまたしても字幕トラブル。
客入れしてからスクリーンを見るとタイトルの文字がすごく小さい。
昨日画面に文字が収まらず、すべての字幕を小さくしたが、今日はプロジェクターもちゃんと機能してる、
それで文字を大きくするようにインカムでマイケルに指示。
すでに客入れしてるので客に見えないようにPCからの信号を切って作業するように言った。
ところがそれがいけなかったのか、またしてもプロジェクター画面が小さくなり文字が切れる。
仕方がないので今日も小さな文字でやらないといけなくなってしまった。
後でマイケルに聞くと大きな文字よりも小さい方が読むのに目線の移動が少なくて早く読めるので、
これはこれでよかったという。
見やすかろうとあまり大きな文字にするのも考えもののよう。
7年間字幕で12カ国公演してきても、まだいろいろ発見があるもんや。
今日は200人ちょっとの入りだけど、今日もいいお客さんでとても反応もよい。
出だし、連日の睡眠不足と酒で少し喉が疲れてかすれ気味だったけど、
後半の皿屋敷の時はもう普通に戻っていた。
考えたら昨日はリハも含めて4席やってるし。
何とか喉も持ってくれますように。
終演後地元紙のインタビューの後、今日はインド料理で打ち上げ。
朝日新聞の篠塚さん、今回協賛していただいているオートバックスの天満さんや、
地元紙の記者の方なども含め20人ほどでワイワイ食事。
明日は最終日。後1日がんばろう。

自由の女神をバックに。
自由の女神は船に乗らないとこんなに大きく見えない。

NewYork Postに載った僕の記事。
写真は2月に来た時にタイムズスクエアで撮った物。

前半は「お玉牛」。
8月5日(日)公演最終日
朝7時前に目が覚めて窓から通りを見ると、なにやら様子がおかしい。
ホテルの前にタクシーがいない。
道路を走る車もない。
いくら日曜の早朝と言っても、全く車が走ってないのは変。
しばらく見ていると道路の真ん中を回転灯を灯したパトカーが静かに走っていった。
あ、ハーフ・マラソンや!
昨日自由の女神を見たサークル・ラインの船着き場からグランド・セントラルに移動する時、
バスを待っていると、ハーフマラソンののぼりが上がっていた。
どうやらうちのホテルの前もコースになっているよう。
スタートは7時なので、そそくさと着替えてホテルの前へ。
ホテル前は完全に封鎖されて、車は入られない。
沿道には応援の人もボチボチ集まってきてる。
カーネギーホール横では中継車が停まっていて、マイクを持ったレポーターもいる。
吹奏楽のグループが演奏をしてる。
30分ほど待っていると停まっていた白バイやパトカーが急に動きだし、先頭ランナーがやってきた。
時間掲示車の後、2~3人のランナーがすごいスピードで通り過ぎていった。
それからいくつものグループが通り過ぎ、あとはおびただしい数のランナー達が通り過ぎる。
1万人がこのマラソンに参加してるそう。
途中でホテルに戻って朝食をとり、地下鉄でハーレムに行ってみる。
今日は日曜で教会でゴスペルが聞けるらしい。
125丁目まで地下鉄で行き、アポロ・シアターの前を通って、
116丁目の教会までハーレムを眺めながら歩いていく。
今日もすごくいい天気で空が青い。
教会へ行くのか、白い服を着た黒人達がぞろぞろ家から出てきた。
観光客でも入れるというメモリアル・バプテスト教会に入ると、係の者にしばらくここで待てと言われ、
廊下でしばらく待機していると教会内に案内された。
どうも真ん中の席は信者用で観光客は両サイドに振り分けられて座らされる。
白いワンピースを着た黒人の係員がきっちり席を埋めていく。
そして10:45ゴスペルは始まった。
5~6曲だけど、アップテンポのノリのいい曲、しっとりした曲、歌詞カードを見ながら
一緒に歌う曲など観客も巻き込んでショーアップされていた。
途中で挨拶タイムがあり、黒人のばぁちゃんらが近所の人や観光客、誰かれかまわず握手をして言葉を交わす。
とてもフレンドリーな雰囲気。
1時間ちょっとやけどよかった~。
献金用のお盆が回ってきたけど、どれだけお布施あげていいかわからんから、
周り見たら地元のばぁちゃんは$1握りしめている。
観光客らはと見ると、こちらも$1。では僕も。
これだけ楽しんで$1は安い。
また地下鉄でホテルに戻って12:40ロビー集合。
荷物がないから、昨日と同じように徒歩で劇場へ。
今日は日曜なので3時半の開演。
会場入りしてマイケルと字幕の修正をする。
開場時間前に終了して楽屋へ。そして開演。
今日もいいお客さんだけど、会場の冷房がやたらききすぎて寒いらしい。
ライトの熱がある高座の僕はちょうどいいが、花登や福矢ら鳴り物班は舞台袖でガタガタ震えてるそう。
客席も少し寒そう。
この国の冷暖房は「ちょうどいい加減」というのはない。
冬は外は-10度でも、室内はTシャツ短パンでも暑いぐらいだし、夏は震えるぐらい冷房をきかせる。
「お玉牛」「皿屋敷」ともツボでよく笑いが返ってくる。
特に「皿屋敷」は噺にすごく客が入り込んでるのがよくわかる。
約2時間で無事終演。
終演後、同行取材をしている朝日新聞の篠塚さんのリクエストで、紋付き袴のまま表に出て写真撮影。
撮影が終わると会場から出てきたお客さんらも一緒にと、記念撮影大会になった。
楽屋に戻ると演出家の宮本亜門さんが楽屋にやってきた。
サンタフェでオペラの演出をした後NYに寄って、僕の公演を見に来てくれたそう。
プログラムのプロフィールを見たのか、「僕と同い年ですね」と同年代ということでえらい盛り上がった。
鳴り物や機材を撤収してタクシーでホテルに荷物を置きに帰る。
そしてホテルそばの中華料理屋で楽日打ち上げ。
料理もうまいし紹興酒の瓶がどんどん空く。
8時半にお開きになり、リンカーンセンターでデイブ・ブルーベックの無料コンサートがあると聞いて、
僕とマイケル、篠塚さんらで行ってみる。
着くと9時を回っていて、アンコール曲だった。
でも最後の「テイク・ファイブ」も聞けたし満足。
その後またてくてく歩いてタイムズスクエア近くのアイリッシュパブでまた飲んでホテルに戻った。
明日は1日オフ。

カーネギーホール横を走るNYCハーフ・マラソンの市民ランナー。

すばらしいゴスペルが聴けるハーレムのメモリアル・バプテスト教会。

「お玉牛」の「半鐘のちゃん吉」の訳はこんな感じ。

楽屋を訪ねてくれた宮本亜門さんと。
二人は同い年です。
8月6日(月)NYの休日
今日は朝からオープンデッキの2階建てバスに乗ろうと言うことになっていた。
7月に準備で来た時、CM撮影で同じようなバスに乗ったが、すごく見晴らしがいいいので、みんなに勧めた。
朝9時半にロビーに集合したが、なんか天気がよくない。
ここのところ毎日晴れて暑い日が続いていたのに・・・。
とりあえずタイムズスクエアまで行きバスに乗る。
ダウンタウンやアップタウンなどいくつかコースがあるが、
$49でどのコースも何度でも乗り降り自由のチケットにした。
高いところから見るマンハッタンは、高層ビル群もよく見え、観光客に人気があるのもよくわかる。
でも前方が雨のようでビル群がかすんで見える。
ガイドは雨を察知したかすぐさまビニールのポンチョを配りだした。
なかなかサービスがいい。
ちょっとパラついてきたので、ポンチョを着る。
雨はすぐにやんだが今日は肌寒いので着たまま観光。
途中で別のバスに乗り換え、ダウンタウンをぐるっと1周して、ホテル前で降りた。
ここでみんな解散してめいめい自由行動。
土産物屋をのぞいたり、世界最大の百貨店メイシーズで買い物したりしたりした後、
マジソン・アベニューのモンブランに行ってみる。
万年筆を買おうと見てみるとどれもずいぶん高い。
でも今回の自分へのご褒美と、$666大奮発。
購入後店員がいろいろ説明してくれる。
帰ってから日本のモンブランショップに持って行くと、名前を彫ってくれるだの、
3ヶ月に一度水洗いをしろだの、メンテナンスも手がかかる。
夜は高橋さんらとイタリアンで食事。
時差にはなれてきたが疲れが一気に出たか、11時頃になると強烈に睡魔が襲ってきた。
ホテルにタクシーで戻って、残りの荷造りをすませ、シャワーを浴びて床についた。

観光バスの2階。ここから見るとタイムズスクエアも違って見える。

頭すれすれを信号機がかすめていく。

1ブロック全部が百貨店。世界最大のメイシーズ。
8月7日(火)~8日(水)帰国
朝8時15分に迎えの車が来るので、8時までにチェック・アウトと思ったが、なんか明細に間違いが多い。
朝食やインターネットは全部料金に込みのはずなのに付いてたりする。
他のメンバーも同じようにいくつか朝食や、食べてもない夕食がチャージされてる。
送りに来た高橋さんに文句を言ってもらって、なんとか精算が終わった。
来る時と同じドライバーの運転するバンに乗り込みラガーディア空港へ。
2時間ほどのフライトでまたデトロイト経由。
出国はノーチェックなので荷物もスルー。
今度はたっぷり時間もある。
みんな残ったドルで買い物したり食事したりのんびり過ごす。
そして関空へ。
ほぼ時間通りに8日の夜6時半頃関空到着。
今回で11度目、のべ15カ国目の海外公演だけど、今回は今までとは全く違う公演だった。
今までは大使館や領事館、国際交流基金などの主催公演や国際演劇祭の招待公演で、
会場や宣伝など、全く向こうに任せておけばよかったが、今回は完全な興業として1から準備した。
昨年春のフランス公演終わりから準備を始め、今回制作協力してもらったアクトベースの武部さんと何度も打ち合わせし、
2月に1ヶ月文化庁文化交流使としてNYに滞在した時、現地スタッフの高橋さんと雪の降る中10数カ所劇場を下見した。
マイケルも友人の結婚式の後マイアミから駆けつけ、一緒に下見して意見を交わした。
各地のデモンストレーションの合間にたくさんの方と会い、今回の公演の協力をお願いして回った。
チケット収入だけでは鳴り物入りの本格的上方落語の公演ができないので、
文化庁からの助成申請、企業からの協賛金集めと、資金もすべて自分で調達した。
7月にも準備のため2泊4日という強行軍でNYに行き、劇場で最終打ち合わせをし、
新聞社数社を回って、タイアップCM5本撮りというハードなスケジュールで宣伝も行った。
人づてに人脈も増え、たくさんの方々にお世話になった。
そのお礼は高座で返すしかない。
いつも以上のプレッシャーを感じての高座だったが、今年で入門30年。数々の高座をこなしてきたし、
言葉も風習も違ういくつもの国でウケてきた。その自信だけが支えだった。
去年12月にトロント・オタワ・モントリオール・カルガリーを回ったカナダ公演を終えて年が明けてすぐ、
2月に1ヶ月文化庁文化交流使としてマンハッタンを拠点にピッツバーグ・ボストン・シアトルと周り、
7月に韓国のパンソリとのジョイント公演を大阪・東京・ソウルと3カ所自主公演でやった。
そして8月のNY公演。
今年に入ってNY3回、ソウル1回の渡航。かなりきついスケジュールをこなしてきたが、
観客の大きな笑いですべてが報われた。
今回協力して下さった皆さん、応援して下さった皆さん。
本当にありがとうございました。
お盆はのんびりしたいところやけど、9月は彦八まつりがあるし、
10月の大阪・名古屋・東京での独演会準備もあるし・・・・
しばらくは休めまへんなぁ。

マンハッタンからラガーディア空港に向かう車内で。

車窓から見えるマンハッタン。
「さようなら」そして「ありがとう」
NY公演ダイジェスト写真集

ダンスのコンクールで賞を獲った子供達がタイムズスクエアで記念撮影。
11時を回ってもこの人出。(8/1)

劇場での高座設営風景。道具方だけではなく鳴り物班も協力。
日米共同作業の高座設営(8/3)

毛せんの細かなしわをスチーマーで取るA型のひろば。
左からプロデューサーの武部氏、ひろば、喬若、福矢。(8/3)

普通の落語会では音響や照明のチェックのみでリハーサルはないが、
字幕のタイミングもあるので服のまま通しリハ。
照明が赤い毛せんに反射して、スクリーンまで赤く染まる。(8/3)

本番前、着物を着ると気持ちも引き締まる。
1席目「お玉牛」は色紋付き。(8/3)

楽屋から高座へ。2席目「皿屋敷」は黒紋付き袴。(8/3)

席目の「皿屋敷」を終えて頭を下げる。
まずは初日終了。手前は三味線の花登。(8/3)

終演後、今回協賛して頂いたコニカミノルタの皆さんと楽屋で。(8/3)

土曜日、ホテルの前の7th.AV.は歩行者天国になり
露店がたくさん出ていた。(8/4)

2日目終演後、地元紙のインタビューを受ける。
それを社内報のため取材するオートバックス天満氏(右手前)(8/4)

マラソンのため封鎖された7th.AV.(8/5)

先頭ランナーがやって来た。
先導の白バイはアメリカらしくハーレー。(8/5)

ハーレムのアポロシアターの前で。(8/5)

ハーレムの街角。
今日はまだ気温もましなので外を歩いていると気持ちいい。(8/5)

劇場で我々がぶら下げていたスタッフパス。(8/5)

舞台袖におかれた鳴り物一式。(8/5)

中華料理屋の店先に張られた僕の公演ポスター。(8/5)

リンカーンセンターの野外ステージで行われたデイブ・ブルーベック・カルテットのライブ。
みんなすごいじいさん達。(8/5)

遊覧バスから見たエンパイア・ステートビル。
天気はどんより。(8/6)

フラット・アイアンビル。
見る角度によっては薄っぺらく見える。(8/6)

マディソン・スクエア・パークから見るビル群。
ビルも個性があっておもしろい。(8/6)

こんな木製給水塔もいたる所で現役で働いている。(8/6)

チャイナタウンの街並み。(8/6)

お客さんを迎えるプロデューサーの武部氏。

受付の美女トリオ。右は高橋さん。

客席後部に設置したミキサー卓後ろに陣取る鈴木さん。
鈴木さんはNYで長年俳優をしている。今回3日間スタッフとして参加してくれた。

ミキサー卓の横で字幕を操作するマイケル・ジャックソン。

鳴り物班チーフの桂福矢。公演中は客席後方のマイケルとインカムで
連絡を取り合う。このインカムも日本から持参。

三味線の花登益子。
こんな写真しかなかった・・・・

笛と写真を担当した笑福亭喬若。レッドソックスのTシャツで
ヤンキースタジアムに入ろうとして止められた。

太鼓・鉦・銅鑼とビデオ担当の桂ひろば。
皆さんどうもありがとうございました。
#落語 #ブロードウェー #NY #ニューヨーク #小春団治